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サカナクション15周年プロジェクト「アダプト」を振り返ってみた

「プロモーション」

コロナ禍と15周年で生まれたプロジェクト「アダプト」

待望のサカナクション最新アルバム「アダプト」が2022年3月に発売された。
これは現在、サカナクションが行っているプロジェクトの一環であり、折返し地点となっている。

今作のアルバム単体で見れば、これだけでも十二分にサカナクションを楽しむことができる作品となっている。
相変わらず1音1音へのこだわりが強く、鳴らすごとにこだわりの深さを感じる。
しかし、どうしても前作である「834.194」と比較をしてしまうと現状ではまだ充足感が足りない印象もある。

それは今作の収録曲数が8曲であるハーフアルバムだからなのか?
それともプロジェクトがまだ完遂されていないからか?

前作「834.194」の方はボリュームのある2枚組、合計18曲の大作で全体を通して聴くとこれでもかというくらい音楽欲を満たしてくれる内容になっていた。
更にはアルバム名の考察から曲全体の質、構成全てにおいて文句なしの作品であった。

もちろん、このプロジェクトがこれから始まる第2章「アセプト」につながることもあり、日々ファンの期待も高くなっていく時期である。
各メディアでの話を聞くと今作を含めて更にこのプロジェクトが楽しみになった。

そこには「サカナクション」、そして「山口一郎」さんの大きな企みがあり、バンドだけでなく今後の音楽の在り方を唱えている様にもみえた。

ちょうどプロジェクトの折返し地点となるこのタイミングに改めて、ここまで過程とその魅力を個人的考察を含めて語っていきたい。

「プロモーション」

コロナ禍によるオンラインライブの在り方とは

改めて、このプロジェクトに関して復習をしてみる。

今回のプロジェクトは
「アダプト」=「適応」⇔「アプライ」=「応用」
が相互に保管し合う2章作であること。

インタビューを見ていると、その裏にもう一つのテーマがある。
それは近年、全世界に大きな変化をもたらした「コロナウィルス」が生んだ”環境”である。

山口さんは度々「コロナ」における環境の変化を話している。
日本は2011年に東日本大震災が起きたときも、日本では多くの変化があった。
しかし今回は世界規模ということもあり、特に音楽業界ではライブという重要なコンテンツが強制的に変化せざる負えなくなった。
人数制限では採算が合わなくなり、各バンドがあくせくとオンラインライブに切り替えている中で、音楽への触れ方は随分変わってしまったように思えた。
またお客さんの立場として私もその一人であり、これまで年間に5〜10本行っていたライブにコロナ禍以降は全く行かなくなってしまった。

オンラインライブになり、移動費、ドリンク代など金額的に浮いたメリットが生まれた一方で、これまで生で音を味わっていた特別感、ワクワク、そして会場での一体感が失われた。
まるで味の薄いステーキを食べているような、物足りなさから徐々に観ることがなくなった。

しかし、山口さんはこのコロナの影響による変化を全くネガティブに発言していない。
むしろチャンスと捉えて、前に進もうとしている強い意志を感じた。
ライブを何より大事にしている一方で、これまで通りとは違う変化を常に必要としているからこそかもしれない。

実際にオンラインでのライブになって、サカナクションからは一切、焦りは感じられなかった。
その理由はコロナ禍の前にすでにオンラインライブを実現しているからだ。

そしてコロナ禍でも見事なコンテンツとして、オンラインライブを行っている。
そのライブこそ「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」である。

度々、youtubeでも配信しているこのライブはこれまで見たどのオンラインライブの中でも特に心が震えた。
光と音の融合、スタートから各曲ごとに場面を移動させる演出、映像とカメラワークの巧みな切り替え。
本当にこれを生でやっていたのか?と考えるとその凄さに圧倒される。

このライブにかかった費用は1億とのこと、商業的に見て完全に赤字だろ笑
しかし、これも映像として残すことで長い期間をかけて回収することができる。DVDやBlu-ray、配信もしかり、それこそ映画館など設備の整った場所で見たいとも思えるので、様々な方法手段で解決できそうだと思う。

これこそ現在行われているプロジェクトのきっかけになる。
そして、音楽業界のオンラインライブの一つの良い例を作ったライブだったと思う。
予算は度外視して、こういうやり方があったのかと気付きがあった。

その後、山口さんによるファン会員向けのソロツアーが直前に中止になり、わずか2週間で準備した自宅配信を行うなど、ここでも斬新な演出をしている。

この演出をしている監督はサカナクションの6人目のメンバーとも言われており、様々なMVの演出もしている「田中 裕介」の力も大きい。

このように、プロジェクト自体が始まる前からキッカケとなる出来事は起きていたのだ。

「プロモーション」

「アダプト」プロジェクトでの意外な新曲発表

そして2021年10月、満を持してプロジェクトが始まった。

そこで気になるのはプロジェクトがどういう内容で行われるかだが、ここでサカナクションは以外な動き方を見せた。

まず皮切りに発表されたのは「SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE」だった。
ライブからスタートする意外な始まり方であった。

予想ではまず皮切りにテーマとして1曲発表されるのかなと思っていた。

予想外ではあったがこのオンラインライブは内容もとても気になるものであった。
続々とyoutubeで流れるティザームービー、この内容にワクワクが止まらない。

①演劇×MV×ライブ
②新曲発表
③提供と協賛の発表

個人的に一番気になったのが③である。
こんなに表立って提供と協賛をハッキリ出しているバンドはいない、企業名は現実的でライブの特別感が薄れるし、あえてオープンにしていない印象だったが、逆にハッキリとしているのが面白いし、何より協賛に「5G LAB」と出てきたことで、5Gを使ったどんなエンタメ体験ができるのか期待も高まる。

またこのときに新曲の発表をライブでやるのも、面白い。
最新の情報をキャッチするためのツールとしてSNSが多用される現代はyoutubeでの発表が当たり前。
そんな現代とは逆行した発表の仕方であることで、ライブでの特別感、協賛企業としても嬉しい。
何よりライブごとにアップデートされている楽曲はより特別にしてくれる。

この煽りが他のバンドとは違う良いプロモーションだったと思う。

これまた予算の話だが、想定よりだいぶオーバーのまたしても億超えだったらしい。
大丈夫かな?これ笑

そしてこのライブで発表された新曲こそ、今作「アダプト」にも収録されているこの3曲だ。

「プラトー」

「ショック」

「月の椀」

中でも個人的には「ショック」が好きだ。

過去曲でいうと、「モス」「アイデンティティー」が好きな方におすすめしたい。
MVの世界観、楽曲のコミカルさと軽快かつ、サビの乗れるリズムとダンス。
歌詞に意味があるというよりはリズム感を大事にしてながら選んだ言葉が最終的に意味を持ったようだ。

コロナにより毎日ニュースで感染者数に一喜一憂する。
世界が毎日ニュースにかじりついて、受けた衝撃=「ショック」として生まれた楽曲である。

「プロモーション」

まとめ

このプロジェクトでは15周年ということで何かをしたい気持ちと「コロナ」が生んだ環境により、生まれた稀有なものとなっている。

一方でこれまでの総括+新しい挑戦、また過去の文化と現代のツールを上手く組み合わせた。
音楽業界として、何歩も前に進めてくれる良い取り組みをしている。

1ファンとしても次は何をしてくれるのだろうとワクワクしているし、楽しみが一つでも増えたことはとても嬉しい!

現状決まっているのが、本作品「アダプト」のライブを行うこと。従来より小さい規模の会場をあえて押さえたとのことで、どんなことをするのか楽しみだ。

また次回作「アプライ」に関してはまだ何も決まっていないらしい。

このあたりの詳しい話はspotifyのライナーノーツでも話をしている。
楽曲合わせて約2時間とボリューム満点になっているので、ぜひ聴いてみてください!

ではまた〜

「サカナクション」の他の記事はこちら。

【レビュー】サカナクション おすすめアルバム「834.194」の魅力は”作為と無作為”(前編)
【レビュー】サカナクション おすすめアルバム「834.194」の魅力は”作為と無作為”(後編)

 

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